漫画

 漫画紹介 田中ユタカ著『愛人 airen』
 この作品は私が数多く読んだ作品の中で最も印象に残った作品です。ある事故をきっかけに死を間近に控えた少年と望まれずうみだされ、封印され、少年の慰み者として数ヶ月間だけの生を復活した少女の話です。描ききれなかったことも多く、また作者の荒削り感も否めないですが、この作品はそれゆえの強烈なメッセージ性やキャラクターの人間味であふれています。前提からもこの作品がハッピーエンドにならないことはわかっていました。結局主人公は無慈悲に彼が戦ってきたものではなく、別のものによって殺され、少女も主人公より先に逝ってしまうという無慈悲にも主人公とヒロインの物語は終わります。しかし1つだけ「救い」がなされています。この「救い」によってただ世界は無慈悲なことだけではないこと、少年と少女は確かにそこにいたことが証明されこの物語は幕を閉じます。
 
 この作者はもともと青年向け漫画家として有名で、「初夜」(私が買った初めての青年向け漫画)という単行本では異例の30万部をセールスしたその業界ではかなりの有名人で、作風は作品に強姦ものや3Pなどは一切なく、明るしあわせな恋人たちのHを描くことで有名な方です。「愛人」より前は底抜けに明るい作品ばかりでしたが、手がけた後ではノスタルジックな作風が強くなり、ストーリーが格段に向上しています。現在は『愛しのかな』、『もとこ先生の恋人』という作品を手がけています。この先生の作品は外れなくほぼ自分の好みなので、早く単行本にならないか期待している今日この頃です。